白輿

白輿

白輿

白輿

国指定重要文化財(工芸品)

概要

「承久の乱」により順徳上皇が佐渡に流されていた時期に、越後寺泊から金櫻神社へ勅使を使わした折に奉納品を載せた輿。

詳細

「人皇八十四代仁治三年九月十二日四十六歳崩御、順徳院上皇 承久年中の頃、鎌倉の義時が為に佐渡へ流され給う砌(みぎり)、当山へ御入輿、萩堂に半月余り御逗留、此の砌(みぎり)、当山より御嶽へ勅使を立て給う。当山へは御親ら八幡宮勧請御帰洛、又寶祚(ほうそ:天皇の位)長久天下泰平の祈りの為、法施として順徳院と号を降され、御召の上輿を賜わり、佐渡国新穂の郷にて崩御されたるなり。委(くわ)しくは縁起に有り」

(常説寺過去帳十二日欄)

「承久中、順徳院蒙塵(もうじん:天子が変事に際し難を避けて逃れること)して佐渡へ遷らせ給う時、越後の寺泊に御滞座の間、御宿願の由にて和州金(大和)の御嶽に奉幣し給わんとせられしに、畿内は忽劇の折柄なればとて、萩某と言ふ人に命じて本州の御嶽に使いを立てらる。其人乗輿を吉澤村に置きて徒行して御嶽へ詣でし故、里人其の地に一堂を建つ、今に萩堂と称す。その時の幣串、御嶽祠中に存在すと云へり」

(『甲斐国誌』・文化11(1814)年成立)

 

白輿の特徴

1、棟立輿で棟木が存在していたことを竹釘およびその穴が証明している。

2、栂、正目の檜板を使った板輿である。板輿は位が上である。

3、輿の縦横の比率が少ない。

・後世の輿は奥行きが長いが、常説寺の輿は奥行きよりも間口が長く、高さが低い。形状は切妻屋根妻入で、軒の長さは3尺2寸。輿の高さは2尺6寸。奥行きは3尺1寸5分。幅は3尺3寸。

・正方形に近い古くて尊い形である。

4、軒が短い。

5、屋根の斜面に反りがあり、棧がたくさん付いている。

6、窓が両側に一つずつあり開閉できる。またこれに簾がかかっていたようで、太い竹釘が残っている。

7、前板に亥の目がついているが、これは前方の大簾の動揺を防ぐため簾について紐を結ぶためのものである。

8、棟の内側にある棧に3本とも面が取ってあり、平安末期のものは面の幅が棧の総幅の4分の1である。

9、前方の両側の板(頬立)に手形がついているのは、日本国中でこの輿だけである。

10、屋根板2枚重なりで、上に棟と直角に棧がある。

11、8人舁きの手輿で、白輿といって色も塗らず何らの装飾もない点は、配流用とした為か。

御嶽金峰山信仰と常説寺

御嶽とは「神仏がおられる神聖な山地」という意味で、金峰山信仰は第10代・崇神天皇の御代(紀元前97~29年)、病気が蔓延したため、各地に神を祀り悪疫退散と万民息災を祈願し、甲州金峰山山頂(2595m)に医薬、禁厭の守護神・少彦名命を祀り山宮としたことに始まる。

第42代・文武天皇の御代(697~707年)、役小角が奈良吉野の金峰山から魔障を除く仏、蔵王権現を祀り、以来神仏混合の修験道場として栄え、南北朝時代(1336~1392年)には、奈良吉野に次ぐ全国的な山岳修験信仰の聖地となった。

修験信仰が衰えた江戸時代には、一般の信仰を集め、金峰山里宮の金櫻神社年番神主が御嶽御師となって、関東一円に「御嶽講」の普及をはかった。

常説寺はもと天台宗の寺院で、弘仁14年(823年)、伝教大師の弟子、栄澄僧正が大師御自作開眼の釈尊立像を奉持し、金峰山表参道、一の鳥居内に台嶺山圓乗寺を建立したことから始まる。

承久年間(1220年頃)順徳上皇が、越後寺泊から甲州御岳金峰山に奉幣のため、上皇御使用の輿を遣わす。勅使は圓乗寺萩堂に輿を留め、半月あまり天下泰平を祈願し、その法施として順徳院号を降ろされ、順徳院山圓乗寺と寺号を改める。

さらに文永年間(1270年頃)、日蓮大聖人甲州巡錫の折、御嶽金櫻神社へ参拝される。その途次、表参道にあたる当山へ御逗留なされ、当山が順徳上皇に御由緒ありと聞くと、承久当時の昔を偲び、法華経の御説法をされる。時の住僧乗蓮僧都は大聖人の教導を受け、御弟子となり、天台宗を棄てて名を安楽院日乗と改め、寺号も順徳院山常説寺と改める。

以来七百余年、法燈相継ぎ釈尊の正法、妙法蓮華経を常説法教化し今日に至る。

山梨県中世寺院分布調査報告書(旧常説寺)出典:山梨県埋蔵文化センター(PDFファイル:1.1MB)

所在地

甲斐市吉沢714(常説寺)

白輿見学者用トイレ

トイレは「吉沢地域ふれあい館 屋外トイレ(洋式:2つ)」をご利用ください。

吉沢地域ふれあい館

参考文献

日蓮宗順徳院山常説寺パンフレット

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この記事に関するお問い合わせ先

商工観光課 観光交流係

〒400-0192
山梨県甲斐市篠原2610
電話:055-278-1708
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更新日:2022年03月08日

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